2019年1月 日本文化コラム

【植物】縁起物と美徳:『松竹梅』

【植物】縁起物と美徳:『松竹梅』(松竹梅の画像)

「残雪や ごうごうと吹く 松の風」(村上鬼城)

(訳:松に当たる風がごうごうと吹きすさんでいる。残雪を抱いた山々が今か今かと春の訪れを待っているようだ。)


松竹梅は、おめでたいものの象徴としてよく格付けなどにも使われますが、どのような理由で選ばれたのかご存知でしょうか。

松竹梅は、元々は中国の画題の一つである「歳寒三友(さいかんさんゆう)」が起源だそうです。松と竹は、冬の厳寒の中でも青々と緑を保ち、梅は他の花に先駆けて美しい花を咲かせ、春の訪れを待ちます。その様子が「清廉潔白・節操」という文人の理想を表現したものとして広く認識されるようになりました。(*1)

日本では、平安時代よりお正月飾りとして門松に使われた松が「目出度い」ものとして認識され、縁起物としての意味合いを強くもつようになりました。門松は竹が室町時代に、梅が江戸時代に松とともに飾られるようになり、マツの操、タケの直とウメの香を重んじて、松は長寿・家運の繁栄、竹は子孫の繁栄、梅は君主の徳をあらわしています。(*2)

同じ松竹梅の植物の取り合わせの中でも、中国は道徳的、精神的な面などの高尚な美徳を意図し、日本では縁起物としての意味を強く持ちます。このように、文化の差が出た理由の一つが、松竹梅の中でも日本では松を主役とするのに対し、中国では梅を大切にしている事が要因だとする説があります。(*2)

中国では、唐代中期より梅の寒さを凌いで咲き、最初に春の訪れを告げる特性に注目されるようになりました。宋代になると、霜や雪を恐れずにまっすぐに咲く様子が、外敵に侵略をされていた時代を生きた詩人達にとって、敵に屈しない気概を象徴する花として高く評価されるようになります。全宋詞の中では、一番詠まれた花となったのだそうです。

一方日本では、前述の通り平安時代より歳神様を迎え邪気を払うために、お正月のお飾りとして門松に松が使われるようになりました。そこに、「松竹梅」の形態が伝播され、お正月のお飾りとして竹と梅も「門松」に加えることで、おめでたいものの象徴として日本人の生活に溶け込んでいったのだと考えられています。

日本では等級などの格付けなどに松竹梅を置き換える風習がありますが、この順番は吉祥の象徴として伝播されてきた時代順です。(*3)直接的に「特上・上・並」と伝えるより婉曲に注文することを美徳と考える日本人ならではの発想ですね。みなさまが、外食で松竹梅と注文される際は、その由来を思い出してみてください。

<参考文献>
*1 盆栽 清香園, 松竹梅はなぜ縁起が良いのか
*2 日中「松竹梅」の比較研究 : 梅のイメージを中心に, 韓
*3 ご贈答マナー, 松竹梅(しょうちくばい)について



※この記事は、2015年1月15日に配信された、NPO法人日本伝統文化振興機構メールマガジン『風物使』の一部を編集・転載したものです。

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