【行事】満月じゃないお月見:『二十六夜待ち』
今年はまだまだ酷暑が続きますが、9月と聞くと、なんとなくススキとお月さまの絵が浮かんでくるのは、十五夜のお月見がよく知られているからですね。現代ではお月見と言えば旧暦8月15日の「中秋の名月」だけになっていますが、かつての日本人は、日々形を変える月にさまざまな名前をつけて観月を愉しんでいたのです。
十五夜の満月のあと、月の出はだんだん遅くなり、これを鑑賞することを「月待ち」といいます。十六夜は「いざよい」と読み、「ためらう」の意で、月の出が遅くためらうように出てくることを表します。以後、十七夜〜二十夜を、それぞれ「立待月(=立って待つ月)」「居待月(=座して待つ月)」「寝待月(=寝て待つ月)」「更待(=更に夜が更けるのを待って出る月)」と呼びます。昔の人が、毎日夜空を見上げて月の出を待ちわびている様子が目に浮かびますね。
花のお江戸の観月といえば、「中秋の名月」と「後の月(旧暦9月13日)」、そして「二十六夜待ち(旧暦7月26日)」でした。「中秋の名月」と「後の月」が満月に近い明るい月であるのに対し、「二十六夜待ち」の月は、夜半過ぎに昇る細くかすかな逆三日月です。十五夜お月さまに映るウサギの餅つきの代わりに、この夜は阿弥陀・観音・勢至の三尊の姿が月の出直後にぽっと浮かび上がるといわれ、江戸っ子たちは仏さまを拝むことを口実に、高台や海岸の料理屋で夜更けまで飲めや歌えの大騒ぎだったそうです。
「二十六夜待ち」の月を拝むと願いが叶うとされ、この日には江戸だけではなく全国の集落で見晴らしのよい東側の堤防などに人が集まり、にぎやかに月待ちが行われていたようです。
2020年の「二十六夜待ち」は、9月13日です。日曜日の夜ですので、『翌日仕事で・・・』という方も多いかもしれませんが、仏さまのご光臨を拝むことができたら、今年の残りの願いも叶うかも知れませんよ。
※この記事は、2010年8月18日に配信された、NPO法人日本伝統文化振興機構メールマガジン『風物使』の一部を編集・転載したものです。
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