2019年12月 日本文化コラム

【風習】一年の感謝を込めて贈る:『お歳暮』

【風習】一年の感謝を込めて贈る:『お歳暮』(お歳暮の画像)

年の暮れも近づくこの時期に、お歳暮を頂く家も多いのではないでしょうか。お歳暮は、お世話になった方々への一年間の感謝の気持ちを年の暮れにする贈り物で、正式には「歳暮の礼」といいます。(*1)

歳暮の礼とは、中国の風習が起源だと言われています。中国では1月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元といい、天の神を祭る日とされていました。この風習が伝播されると、日本では日本古来の先祖の霊をお迎えするために必要な供物を、嫁いだり分家した親せきが本家に贈ったりまたは近所やゆかりのある方々に贈り合う行事として発展していきました。

江戸時代の元禄期には、武士の組織でもある組合の頭に日頃のお礼と感謝を込めてお歳暮が贈られるようになりました。その後、この風習が商人にも広まり、得意先やお世話になった人々に贈られるようになりました。今日の商店が年末に配る、店の名前入りの手ぬぐいやカレンダーなどは当時の名残などとも言われています。

1688年に刊行された日本歳時記には下記の記載が見受けられます。

「下旬の内、親戚に贈物して歳暮を賀す。また知れるところの鰐寡孤独貧窮困苦の者にも、我が力に随って財物を賑わうべし。あるいは我にかつて恩恵ある人、師伝となれる人、我が身および家人の病よ療せし医師などのも分に随いて厚く物を贈るべし」
(訳:年末には親戚に贈り物として歳暮を贈りましょう。孤独で貧困に苦しんでいる人、昔お世話になった人、師匠や先生や組頭、自分や身内の病を治して くれた医師にも日ごろの感謝を最大限に込めて、厚く贈り物を贈りましょ う。)
このように、歳暮は日頃お世話になった多くの人々に贈られるようになりました。

現在では、日頃お世話になった人々や会社の上司、部下、友人、仲間にも日ごろの感謝を込めて贈る年中行事として歳暮の礼の風習が引き継がれています。お歳暮には、のしや水引が使われていますが、これらには「魂を贈り物に結びとめる」という大切な意味合いが込められています。日本古来の結ぶ事によって魂を宿らせる「結びの信仰」と深く関わり合いがあります。ですので、のしや水引をつけて贈ったお歳暮は単なる物品ではなく、贈り主の感謝の気持ちが込められた神聖なものとなるのです。

のしは、「のしあわび」と言われあわびを薄くむいて乾かし、竹筒など円筒形のもので伸ばしたものが元祖なのだそうです。古くから、不老不死や、長寿、商売繁盛を願って贈られるそれは、贈る者を贈られる者も贈り物の中で最高級品のものでした。現在ではセルロイドや樹脂などで出来たものに代用されていますが、本物のあわびが使われていた事を考えると、いかに気持ちが込められて大切に贈られていたのかと思います。(*2)

お歳暮を贈るときには、贈る品物の内容や金額に目を向けがちではありますが、心を込めて日頃の感謝を贈ると言う気持ちを大切にしたいですね。また、お歳暮を頂いたときにも贈り主からの思いを大切に受け取りたいですね。

【参考文献】
*1 お肉良い肉ドットコム, お歳暮の基本,
*2 兵吉屋, 熨斗って何?,


※この記事は、2014年12月18日に配信された、NPO法人日本伝統文化振興機構メールマガジン『風物使』の一部を編集・転載したものです。

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