2018年1月 日本文化コラム

【植物】学問成就と梅の香り:『梅祭り』

学問成就と梅の香り:『梅祭り』(梅の画像)

「風寒み 雪にまがへて咲く花の 袖にぞうつれ 匂(にお)ふ梅が香」
(菅原道真)

(訳:冷たい風雪に咲く梅の花の芳しいこと。涙に暮れる私の袖にもその香りを分けておくれ。)


国公立大の入試も2次試験が始まり、今年の受験シーズンもいよいよ大詰めを迎えました。今年も多くの受験生が、不安や期待を胸に天神さまに合格祈願に出かけたのではないでしょうか。

天神さまの祭神は、平安時代の優れた政治家・学者であり、歌人でもある有名な菅原道真公です。道真公は、幼い頃から詩歌に秀で、若くして役人に取り立てられてからは順調に出世して国政の重要な職務を担います。ところが57歳のとき、政敵藤原氏の陰謀により九州の大宰府に左遷され、その地で没します。その後、都では政敵が次々に死んだり、天変地異が多発したりしたため、人々は道真公の祟りとしてその御霊を鎮めるために道真公を天神(雷神)として祀る天満宮を建立したのでした。

冒頭の歌は、大宰府に下る途中の大輪田泊(現在の兵庫港)に上陸したとき、今を盛りと咲く梅の花を見て詠んだ歌です。道真公の梅の歌は、都を去るとき屋敷の庭の梅を見て詠んだ、「東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」が有名ですね。各地の天神さまには多くの梅の木が植えられ、シンボルとしても梅紋が使われています。中国の故事には梅の花は学問が栄えるときにより芳しく香るという言い伝えがあり、別名「好文木」と呼ばれます。若き日の道真公も梅の香りの中で伸びやかに学問ができたと記しています。梅は揺れ動く人生のさまざまな場面で道真公の心を慰した、特別な花だったのでしょう。

受験前には咲き初めだった梅も、今が盛りです。花の見ごろが終わる頃には、多くの高校生の進路も決まっていることでしょう。ですが、勉強は一生続くもの。現役の受験生も昔の受験生も、実りある人生のために、生涯の学問成就を梅の香の芳しい天神さまに今一度祈願してはいかがでしょうか。

▼湯島天神(東京)梅祭り 〜3月8日まで
週末にイベントが開催されます。梅祭り期間中は宝物殿の割引あり。

▼北野天満宮(京都)梅苑公開 〜3月下旬まで見ごろ
50種約1,500本の梅が公開されています。

▼大宰府天満宮(福岡)〜3月上旬まで見ごろ
全国から「献梅」として捧げられた約200種が楽しめます。



※この記事は、2011年2月28日に配信された、NPO法人日本伝統文化振興機構メールマガジン『風物使』の一部を編集・転載したものです。

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