2020年2月 日本文化コラム

【行事】道具にも魂を感じて:『針供養』

【行事】道具にも魂を感じて:『針供養』(針と針山の画像)

2月8日は、主に関東以北の地域で「針供養」が行われる日です。毎年12月8日と2月8日は、「事八日(ことようか)」と呼ばれ、地域によって農事 を中心に2月8日を「事始め」、12月8日を「事納め」、もしくは正月を中心に12月8日を「事始め」、2月8日を「事納め」とするところがあります。針 供養は、関西以西では12月8日に行われることが多いようです。

針供養は、古くなったり折れたりした針を集めて供養する行事で、江戸時代に始まったとされています。この日にはいつも硬いものを刺している針を、豆腐やコンニャク、餅など柔らかいものに刺して休ませ、淡島神を祀る神社や寺院に納めます。いつも働いてくれる道具を労わって感謝するとともに、針を使う仕事の上達や、針による怪我がないよう祈願するのです。

江戸時代には、着物の仕立てや足袋を縫う職人の家では、事八日には針仕事を休み、綿を敷いた三方に折れた針を載せて床の間に置いたり、神社や寺院に納めたりして供養しました。また長く家庭で針仕事を担ってきた女性たちも、「針休め」といって、この日には必ず針仕事を休みました。

全国の淡島・粟島神社の総本山は和歌山県の加太にある加太淡嶋神社で、主祭神は裁縫の道を初めて伝えたとされる少彦名神(すくなびこなのかみ)です。また住吉明神の妃であったが婦人病のために加太に流された天照大神の六女、波利塞女(はりさいにょ)も祀られており、「はり=針」が結びついたとも言われます。少彦名神は医薬の神でもあり、波利塞女が婦人病を癒す神であることから、女性の救済という意味から針供養が広まったとも言われます。

家庭で針仕事をすることが少なくなった現代、針供養は家庭ではほとんど見られなくなりましたが、今でも和裁をする人や被服科のある学校、畳職人やときには看護師など、針を使う人々の間で守られています。家庭での手仕事が少なくなり、既製品を使い捨てることの多い現代の生活の中でも、時にはいつも使っている道具やモノに感謝する心を持ちたいものです。


※この記事は、2011年2月8日に配信された、NPO法人日本伝統文化振興機構メールマガジン『風物使』の一部を編集・転載したものです。

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